採用歩留まり向上テクニック!定義・計算方法から原因と改善策まで徹底解説

応募は集まるのに採用に至らない」「内定辞退が多い

このような採用課題に心当たりはありませんか?

人事担当者にとって、せっかく集めた応募者が選考途中で辞退したり、内定を出しても承諾してもらえなかったりする状況は大きな悩みです。

実はそれらの課題のカギを握るのが「採用歩留まり」という指標です。

本記事では、採用歩留まりの基本的な意味から具体的な計算方法、平均値、歩留まり低下の原因と改善策までを網羅的に解説します。

自社の採用フローを見直し、歩留まりを改善することで、効率よく優秀な人材を採用できるようになるでしょう。

目次

採用歩留まりとは?定義と重要性

採用歩留まりとは、応募から採用に至る各選考ステップで「次の工程に進んだ人数の割合」を示す指標です​。

言い換えれば、母集団から最終的にどれだけ採用(内定承諾)に至ったかを測る採用効率の指標とも言えます。

歩留まりの数値はパーセント(%)で表し、高ければ高いほど途中離脱者や不合格者が少なく、採用プロセスが効率的に進んでいる状態を意味します​。

採用歩留まりが重要視されるのは、企業の採用活動のムダを見える化できるからです。

例えば、歩留まり率が低いと「多くの応募者に対して採用に至った人数が少ない」、つまり採用プロセスのどこかで大量のロス(辞退や不合格)が発生していることを示唆します。

これは人件費や求人広告費など採用コストの無駄遣いにつながるほか、採用目標に必要な応募者数の見積もりにも影響します。

逆に歩留まり率が高ければ、少ない母集団で効率よく必要人数を採用できていることになり、採用活動の質が高い状態と言えます。

人事担当者にとってのメリット: 自社の各選考ステップの歩留まりを把握しておくことで、どの段階に課題(ボトルネック)があるかを客観的に分析できます。

歩留まり率は「採用がうまくいっているか」を定量的に示すため、採用計画の立案や改善策の効果検証にも役立ちます。

「なんとなく採用がうまくいかない…」という漠然とした悩みも、歩留まりという数字に分解して捉えることで、具体的な対策を講じやすくなるのです。

採用フローごとの歩留まり率と計算方法

採用歩留まりは、採用フローの各段階ごとに算出することができます。

一般的な採用フロー(応募 → 書類選考 → 面接(複数回)→ 内定 → 承諾)における主な歩留まり率と、その計算方法を見てみましょう。

歩留まり率と計算方法
  • 書類選考通過率書類選考を通過した人数 ÷ 応募者数 × 100% です。例えば応募100名中30名が書類選考を通過した場合、書類選考通過率は30%となります。
  • 一次面接通過率一次面接の合格者数 ÷ 一次面接実施人数 × 100%。一次面接を受けた20名中10名が通過したなら通過率50%です。
  • 最終面接通過率(内定出し率)最終面接合格者数(内定を出した人数)÷ 最終面接実施人数 × 100%。最終面接まで進んだ5名中3名に内定を出したなら60%となります。
  • 内定承諾率内定承諾者数 ÷ 内定提示数(内定者数)× 100%。例えば内定を出した3名のうち2名が承諾した場合、内定承諾率は66.7%です。
  • (参考)内定辞退率内定辞退者数 ÷ 内定提示数 × 100%。内定承諾率の裏返しで、上記例では辞退率33.3%になります。

これら個別の歩留まり率を掛け合わせれば、「応募者に対し最終的に何%が入社に至ったか」という最終歩留まり(採用率)も算出できます。

上記の例では、応募100名に対し最終的に2名が入社したため、採用率は2%です。

一般に、書類選考~内定承諾までの各歩留まりを改善することができれば、この最終的な採用率も向上していきます。

計算式まとめ: 採用歩留まり率 = 次の選考ステップに進んだ人数 ÷ 前のステップの人数 × 100%

各段階でこの式を当てはめ、書類選考通過率・面接通過率・内定承諾率などを算出しましょう。

ポイント: 自社の採用プロセスが複数ある場合(例:新卒と中途でフローが違う等)は、まずフローを明確化することが大切です。

フローが不明確なままでは正確な歩留まり率を計算できません。

ステップごとに定義を揃えたうえで人数をカウントし、歩留まりを算出するようにしましょう。

新卒・中途・業界別の採用歩留まり平均

自社の歩留まり率を評価するには、他社の平均値や業界水準と比較してみることも有効です​。

ここでは新卒採用と中途採用、それぞれの一般的な歩留まり率の平均と、業界による差異について紹介します。

新卒採用の平均歩留まり率

新卒採用では、エントリー数(応募者数)が非常に多く、最終的な内定承諾者まで絞り込まれていく過程で歩留まりが低下していく傾向があります。

リクルート就職みらい研究所『就職白書2024』の調査データによれば、新卒の平均的な歩留まり率は以下の通りです​。

  • 書類選考通過率: 約48.5%​(応募者のうち約半数が書類選考を通過)
  • 面接通過率: 約33.1%(書類通過者のうち約1/3が最終的に内定獲得まで進む)
  • 最終的な内定率(採用率): 約8.7%(応募者全体のうち8~9%が内定承諾に至る)

新卒の場合、内定承諾率(内定を出したうち承諾された割合)は平均54%程度と報告されています​。

裏を返せば約半数が内定辞退している状況であり、母集団が大きい分だけ最終的な歩留まりは低めになる傾向があります。

中途採用の平均歩留まり率

中途採用では、新卒に比べて応募者数自体が少なめですが、応募者の志向やスキルが明確でミスマッチが少ない傾向があり、全体的な歩留まり率は新卒より高くなるケースが多いです。

マイナビ『中途採用状況調査2024年版』によると、中途採用の平均的な歩留まり率は以下の通りです​。

  • 書類選考通過率: 約30%(応募100人に対し30人が書類合格)
  • 面接通過率: 約50%​(書類合格者の半数が最終的に内定まで進む)
  • 最終的な内定率(採用率): 約4~5%​(応募者全体のうち4~5%が内定承諾に至る)

一見すると新卒より低い内定率に感じますが、内定承諾率は中途採用の方が遥かに高い点が特徴です。

中途では一度内定を出せば約90%以上が承諾に至るというデータもあり、応募母数が絞られている分、確度の高い候補者だけが進考に残っていることがうかがえます。

実際、「中途採用は目指す企業や職種が明確なケースが多いため、新卒より内定承諾率が高い傾向がある」ことが報告されています。

一方で応募〜面接への参加段階で離脱が多く「面接参加率は5割を下回る」ケースも見られます。

つまり中途では早期離脱は多いものの、最終的にオファーを出せた候補者はほぼ確実に入社してくれるという傾向があります。

業界別の歩留まり傾向

採用歩留まりの数値は業界によっても差があります。

特に内定承諾率(オファー受諾率)は企業の属する業界の人気度や求人ニーズによって上下します。

ある調査では、新卒採用における内定承諾率が平均より高い業界は「製造業」「サービス・情報(IT)業」「金融業であり、逆に承諾率が低いのは「建設業」「流通業(小売り等)」という結果が報告されています。

製造業やIT・金融は比較的安定性や待遇面で魅力を感じる学生が多く承諾率が高い一方、建設・流通は他業界との人材獲得競争が激しいことや業種イメージの問題などから、承諾を得るのに苦戦しやすいようです。

さらに、中途採用の歩留まりも職種・業種によって変動します。

一般的にIT業界は歩留まりが低い(内定承諾率が低め)と言われ、優秀な人材ほど複数企業からオファーが来るため入社承諾を得にくい傾向があります​。

逆に専門性の高い業界やニッチな分野では、応募者自体が少ない代わりに志望度が高く、辞退が起こりにくい場合もあります。

自社の属する業界平均を把握し、「うちの業界は内定辞退率が高めだからフォローを手厚くしよう」など対策の参考にするとよいでしょう。

採用歩留まり低下の原因(候補者側/企業側)

採用歩留まりが低下する要因は大きく分けて「選考通過者が少ない(選考基準の問題)」場合と「候補者の辞退が多い」場合に分類できます。

後者の辞退・離脱についてさらに掘り下げると、候補者側の事情によるものと企業側の対応に起因するものが考えられます。

それぞれ代表的な理由を見ていきましょう。

候補者側の主な辞退理由

候補者が選考途中で辞退したり、内定を承諾しなかったりする背景には、求職者側の事情や心理的要因があります。

主なものは次のとおりです。

候補者側の主な辞退理由
  • 他社で内定が決まったため: 選考中に他社から先に良いオファーをもらい、そちらに行ってしまうケースです。求職者8000人超への調査でも、「他社の選考が通過したため」辞退を決めた人は28%にのぼりました。
  • 仕事内容・条件のミスマッチ: 面接を進める中で「聞いていた話と違う」「求人票の条件が希望と合わない」と感じ辞退に至るケースです。実際、「求人情報と実際の話が違った」ことを辞退理由に挙げた人が49%と最も多かったというデータがあります​。
  • 企業の雰囲気や対応への不安: 面接官の態度が悪かった、社内の雰囲気が合わないと感じた、といった理由で熱意を失う場合です。上記調査でも「面接官の態度が悪かった」「会社の雰囲気が悪かった」が辞退理由の上位に挙がっています。
  • 連絡や選考結果通知が遅かった: 応募後のレスポンスや面接日程の連絡が遅いと、その間に他社に流れたり志望度が下がったりします。「面接の連絡が遅かったため辞退した」という声も候補者から実際に聞かれます​。
  • 個人的な事情・心境の変化: 家庭の事情や現職の引き留め、転職・就職自体を再考した結果辞退するケースもあります(これは企業ではコントロールしづらい部分です)。

候補者側の辞退理由を見ると、「他社に負けた」「期待と現実のギャップ」「企業対応への不満」といった、企業側の提供価値や接し方に起因するものが多いことがわかります。

もちろん個人都合もありますが、多くの場合企業側で改善できる余地があります。では次に、企業側の原因を整理してみましょう。

企業側の主な原因・課題

企業の採用プロセスや対応に原因があって歩留まりが低下しているケースも多々あります。

以下に、企業側でよく見られる課題を挙げます。

企業側の主な原因・課題
  • 採用プロセスが長く内定出しが遅い: 選考に時間がかかりすぎると、その間に候補者は他社に流れてしまいます。実際「内定までに時間がかかるケース」が歩留まり低下の一因と指摘されています。競合他社よりオファーが遅れると、その分辞退されやすくなります。
  • 求人情報と実態の乖離: 採用サイトや求人票に書かれている内容と、面接で聞く話や実際の待遇・仕事内容が違っていると、候補者は不信感を抱いて離脱します。事前に誤った期待を持たせてしまうことは、面接辞退・内定辞退の大きな要因です。
  • 候補者フォローの不足: 選考中や内定出し後のフォローアップが手薄だと、候補者の入社意欲はどんどん低下します​。連絡が来ない期間が長かったり、質問・不安に対するケアがないと、「自分は歓迎されていないのでは?」と感じさせてしまい辞退につながります。
  • 自社の魅力発信・ブランディング不足: 会社の魅力や雰囲気が候補者に伝わっていないと、最終的な入社の決め手に欠け、他社に負けてしまいます​。特に知名度の低い企業や中小企業では、採用ブランディングの弱さが歩留まり低下につながりがちです。
  • 評価・選考基準が厳しすぎる: 採用ハードルを高く設定しすぎているために合格者が出ず、結果的に歩留まり率が低くなる場合もあります。不必要に選考回数が多かったり、必須要件を絞り込みすぎたりしていないか見直す必要があります。
  • 面接官の対応やスキル不足: 面接官の態度や質問内容が原因で候補者が幻滅し辞退するケースもあります。「面接官の一挙手一投足が候補者から評価されている」ことを忘れてはいけません。面接官が横柄だった、準備不足で会社の説明ができなかった、といった問題は企業側の落ち度です。
  • 提示条件(給与・待遇面)の弱さ: 内定提示したオファー内容が候補者の希望とかけ離れている場合、承諾は得られにくいでしょう。他社より給与水準が低い、福利厚生が充実していない、勤務地や勤務形態の柔軟性がない等、競合他社に見劣りする点は内定辞退の一因となります。福利厚生や待遇面の見直しも歩留まり改善には有効です​。

以上のような企業側原因に心当たりがある場合、その改善に取り組むことで歩留まり率向上が期待できます。

データ分析によるボトルネックの特定方法

効果的に採用歩留まりを改善するには、まずどの選考段階で歩留まりが低下しているか(ボトルネック)を把握する必要があります。

以下の手順で、自社の採用フローを分析してみましょう。

自社の採用フローを分析
  1. 自社の採用フローを洗い出す: 新卒採用・中途採用など区分ごとに、応募から入社までのプロセスを書き出します。各ステップ(応募受付、書類選考、一次面接、最終面接、内定、内定承諾など)を明確に定義しましょう。
  2. 各ステップの人数を集計する: 一定期間(例えば直近1年間)における各ステージの人数データを集めます。「応募者〇名、書類選考合格〇名、一次面接実施〇名、…最終入社〇名」と一覧にします。可能であれば募集別や時期別にデータを分けて傾向を見るとより詳細な分析が可能です。
  3. 歩留まり率を計算する: 前述の計算式に沿って各段階の歩留まり率(通過率)を算出します。エクセル等で「次工程人数÷前工程人数」で計算しパーセンテージ表示すればOKです。もし採用管理システム(ATS)を導入していれば、レポート機能で自動計算できる場合もあります。
  4. 平均値や目標値と比較する: 算出した自社の歩留まり率を、業種や採用区分ごとの平均値、もしくは自社で設定した目標値と比較しましょう。平均より極端に低い数値の工程があれば、そこが自社採用フローの弱点と言えます​。例えば「書類選考通過率が平均より10ポイント低い」「内定承諾率が周りより明らかに低い」などです。
  5. ボトルネックの特定: 上記比較により、特に歩留まり率が低いフェーズをボトルネックと特定します。「応募は十分来ているのに書類選考通過率が低い」なら採用母集団の質や選考基準に課題があるかもしれませんし、「最終面接までは順調なのに内定承諾率が低い」なら内定後のフォローや提示条件に問題があると推測できます。
  6. 原因分析: ボトルネックとなっている段階について、前章で述べたような候補者側・企業側の原因を照らし合わせて考えます。可能であれば辞退者にアンケートやヒアリングを行い、直接理由を集めるのも有効です​。「面接辞退者にその理由を確認することも有効」であり、そこから見えてくる改善ヒントも多いでしょう​。

このようにデータに基づいてボトルネックを把握すれば、ピンポイントで対策を講じることができます。

闇雲に「歩留まりを上げよう!」と取り組むより、根拠にもとづいた改善策の方が効果的なのは言うまでもありません。

💡例: 自社分析の結果、一次面接実施数に対して内定出し人数が極端に少ない(一次→内定の通過率が低い)と分かった場合、面接官が厳しすぎる評価をしていないか、面接で企業の魅力を伝えきれていないのではないか、といった仮説が立ちます。

そこを改善すれば歩留まり向上につながる可能性が高いでしょう。

段階別の採用歩留まり改善策と成功のポイント

ボトルネックが特定できたら、次はその段階を中心に具体的な改善アクションを起こしましょう。

ここでは採用フローの段階別に、歩留まり率向上のためのテクニックと成功のポイントを解説します。

書類選考段階の改善ポイント

書類選考の通過率が低い場合、母集団形成や選考基準に課題があるかもしれません。対策として次のような点を見直しましょう。

書類選考段階の改善ポイント
  • 募集要項・求人票の見直し: 応募者のミスマッチを減らすために、募集条件や仕事内容をできる限り具体的かつ正確に記載します。誇張した表現や実態と異なる情報は避け、「等身大の情報発信」を心がけることが重要です​。リアルな情報で応募ハードルを適切に設定すれば、志望度の高い適格な人材からの応募割合(有効応募率)が上がり、結果的に書類通過率も向上します。
  • 母集団の質と量の改善: そもそも応募者が少なかったり、要件に満たない応募が多い場合は、母集団形成施策を見直します。新卒なら大学へのアプローチや求人媒体選定、中途なら職種に合った専門求人サイトやエージェントの活用など、ターゲット層にリーチできる採用チャネルを検討しましょう。応募者の分母が増えれば通過者も増えますが、同時に質も意識してチャネル選定・内容改善を行うことが大切です。
  • 選考基準の再検討: 書類選考で求める資格・経験要件が厳しすぎないかチェックします。本当に必要な条件とプラスアルファの希望を混同していると、有望な人材まで落としてしまい歩留まりを悪化させます。どうしても譲れない要件以外は柔軟に考えるか、「ポテンシャル重視」で多少要件未達でも面接に進める枠を設けるなど工夫しましょう。
  • 選考プロセスの簡素化: 新卒採用などでエントリーシートや適性検査など複数の書類提出を課している場合、それが離脱を招いていないか検討します。応募のハードルが高すぎるとそもそも選考に進む母数が減り、結果的な歩留まり(選考参加率)が下がります。必要最低限の情報でまずは選考に乗せる、オンラインで簡単に提出できる仕組みにする等、候補者の手間を減らす工夫も有効です。

面接プロセス(一次・二次・最終)の改善ポイント

面接フェーズで辞退者が多かったり合格者が少ない場合、面接日程の調整から実際の面接対応、評価手法まで見直しが必要です。

主な改善策を挙げます。

面接プロセス(一次・二次・最終)の改善ポイント
  • 採用フローの短期化: 歩留まり率の改善に最も効果が高いのは、採用フローの短期化です​。一次・二次・最終と何度も面接を設定している場合は、可能な限り回数を減らし選考期間を圧縮しましょう。特に中途採用では応募から内定まで2~3週間で決めるスピード感がないと、他社に先を越され辞退されるリスクが高まります​。
  • 柔軟な面接スケジュール調整: 候補者が面接を辞退してしまう要因の一つに、日程が合わない・調整が煩雑という問題があります。オンライン面接の導入や、LINE・メール等で手軽に日程調整できる仕組みを用いる、土日や定時後の時間帯にも対応する(特に在職中の中途候補者には有効)といった柔軟な対応で、面接辞退を減らすことができます​。
  • 面接官トレーニングと評価基準の統一: 面接の質を上げ通過率を改善するには、面接官への教育も欠かせません​。事前に評価項目と基準を明確に共有し、面接官ごとのバラつきを減らします。また面接官には「自分も候補者に評価されている」という意識を持ってもらい、礼儀正しい対応や候補者が話しやすい雰囲気づくりを徹底してもらいましょう。
  • カジュアル面談の活用: 面接前の段階で候補者との接点を増やし動機形成する方法としてカジュアル面談があります​。選考とは別に社員と気軽に話す機会を設けることで心理的ハードルを下げ、「興味はあるが正式な面接に進むか迷っている」層の歩留まり向上に効果的です。
  • 面接で企業の魅力を伝える: 面接は評価の場であると同時に、候補者に自社を売り込む場でもあります。合格不合格の判断ばかり気にするのではなく、各面接で必ず自社の強みやポジションの魅力を伝える時間を取りましょう​。

内定出し~承諾段階の改善ポイント(内定辞退防止策)

最終面接を通過し「内定」を出した後も、候補者が承諾してくれるかどうかという大きなハードルが残ります。

内定承諾率を上げるための施策をまとめます。

承諾段階の改善ポイント
  • 魅力的なオファー提示: 内定通知の際は、給与・役職・勤務地など候補者に提示する条件面で可能な限り魅力的な案を出しましょう。他社オファーと比較検討される前提で、市場相場に見合った報酬や魅力的な福利厚生を提示することが重要です。
  • 内定連絡のタイミングと方法: 内定を出すと決めたら即座に電話やメールで意思表示を伝えます。他社より一日でも早く「ぜひうちに来てほしい」という熱意を伝えることで承諾率は上がります。通知方法も、まずは直接電話で思いを込めて伝え、その後正式書面を送るなど丁寧さとスピードの両立を図りましょう。
  • クロージングトークを用意: 内定通知時には候補者の迷いを払拭するクロージングトークが効果的です。「○○さんの◯◯な経験はぜひ当社で活かせると確信しています」「ぜひ一緒に働きたいと現場社員もお待ちしています」といった具体的な歓迎メッセージや活躍期待を伝えることで承諾率が高まります。
  • 他社状況のヒアリング: 内定を出した際や打診中、候補者が他社選考状況を教えてくれる場合もあります。その場合は競合に負けないよう迅速かつ丁寧にフォローしつつ、意思決定期限を確認するなど主導権を握りましょう。


上記を実践し、候補者に「この会社に入りたい」と思ってもらえれば内定承諾率は確実に向上します。

実際、中途では承諾率90%超えも可能です。

一方、新卒の場合は学生が複数社の内定をキープし最後まで悩む傾向があり、承諾率がどうしても低めになりがちです。

そのため、新卒では次の「内定者フォロー」が特に重要になります。

内定者フォローによる入社までの歩留まり維持

内定承諾後、入社までの間に候補者の気持ちが離れてしまい、入社辞退(承諾後辞退)となるケースも少なくありません。

特に新卒採用では「内定承諾後の辞退率」が60%以上にも達するとの報告もあり​、承諾を得てから入社日までのフォロー体制が歩留まりに直結します。

内定者フォローのコツを押さえ、入社率(入社人数÷承諾人数)100%を目指しましょう。

内定者フォローの方法
  • 定期的なコミュニケーション: 内定承諾後、入社まで長期間空く場合は人事担当者や配属予定先の社員から定期的に連絡を取ります。月に一度は電話やメールで近況を伺ったり、会社のニュースを共有したりして、「気にかけてもらっている」という安心感を与えます。
  • 内定者懇親会・研修の実施: 入社前に内定者同士や先輩社員と交流できる機会を設けましょう。懇親会、食事会、オフィス見学、入社前研修などを通じて「一緒に働く仲間」の顔が見えると入社意欲が高まります。最近ではオンライン懇親会やチャットツールでのコミュニティ作りも効果的です。
  • メンター・リファレンス制度: 内定者一人ひとりに先輩社員をメンターや“入社前友達”としてアサインし、いつでも相談できるようにしておくのも有効です。年齢の近い若手社員がつくことで、入社後の具体的な働き方や不安点を気軽に聞ける環境を提供します。
  • 企業情報の継続発信: 入社日までブランクが長い場合、自社への興味が薄れてしまわないように注意が必要です。定期的な社内報送付、SNSでの発信、プロジェクト紹介や社員インタビュー記事の共有など、自社の魅力を内定者に発信し続けることも重要です。ポジティブな情報に触れてもらい、「やっぱりこの会社に入るのが楽しみだ」と思ってもらえる工夫を凝らしましょう。
  • 質問・不安のケア: 内定者が感じる入社前の不安(配属部署はどこだろう、必要な資格勉強はあるか、引越しはどうしよう等)を汲み取り、先回りして情報提供します。例えば配属予定の通知や入社手続きの案内を早めに行う、必要に応じて個別相談の場を設けるなど、内定者の不安を解消するフォローが大切です。

これらのフォローアップにより、内定から入社までモチベーションを維持させ、歩留まり低下を防ぐことができます。

「内定者は放っておいても入社してくれるだろう」という姿勢は禁物です。

特に売り手市場の昨今、フォローが足りず入社への疑問や不安を解消できなかったために辞退されてしまった、という事例は枚挙にいとまがありません。

せっかく承諾をもらった貴重な人材を失わないよう、入社の日まで伴走する意識を持ちましょう。

候補者体験(CX)を向上させるポイント

採用歩留まりを語る上で近年特に注目されているのがCX(Candidate Experience)=候補者体験の向上です。

候補者体験とは、応募者が求人に応募してから入社に至るまでに感じる体験価値のことです。

CXを良くすることは、各選考フェーズでの離脱防止に直結します。ここでは、候補者体験を高めるために企業ができる主な施策を紹介します。

候補者体験(CX)を向上させるポイント
  • 応募しやすい環境作り: 応募ページのユーザビリティを高め、スマホからでも簡単に応募できるようにしましょう。問い合わせへのレスポンスも迅速に行い、応募段階でのストレスを減らします。
  • 丁寧で迅速なコミュニケーション: 応募受付の確認連絡、面接日程の調整連絡、選考結果の通知など、候補者とのやり取りはスピーディかつ丁寧に行います。「応募後○日以内に結果連絡」など明確なレスポンス目安を決めて守ることで、候補者に安心感を与えましょう。特に不合格通知も放置せず出すことで、企業イメージの向上につながります。
  • 候補者に配慮した面接対応: 面接官だけでなく受付や案内係の対応も含め、候補者にとって気持ちよく過ごせる面接体験を提供します。「面接は受付から始まっている」という言葉もあるように、最初の挨拶から最後の見送りまで礼儀正しくフレンドリーに対応しましょう。
  • フィードバックの提供: 選考で残念ながら不合格となった場合でも、希望者にはフィードバックを伝えるようにすると好印象です。「今回見送りだが○○の経験は評価された」といったコメントがあると、候補者は自身の成長につながります。難しい場合も、感謝と今後の健闘を祈る言葉を添えるだけで印象は違います。
  • 候補者の声を拾い改善する: 選考途中で辞退した人にアンケートを依頼したり、入社者から選考中の感想を聞いたりして、候補者目線での評価を集めます。そのフィードバックを元に、「応募フォームが分かりにくいと言われたので改善」「面接官の説明が堅苦しいとの声があったので研修実施」などPDCAを回しましょう。候補者からの率直な声はCX向上の宝庫です。

候補者体験を良くすることは、企業の評判アップにもつながります。

実際にネットの口コミで「選考中の対応が丁寧だった」「不合格だったが対応が良かったのでファンになった」といった声が広がれば、次の採用時には応募者増加という形で返ってくるでしょう。

反対にCXが悪いと、口コミサイト等で悪評が立ち「評判が悪いから応募を辞退」といった負の循環にもなりかねません​。

常に候補者視点に立ち、自社の採用プロセスを点検・改善していくことが大切です。

採用管理ツール(ATS)などの活用法

採用歩留まりの改善には、人の工夫だけでなくテクノロジーの活用も効果的です。

近年、多くの企業がATS(Applicant Tracking System:採用管理システム)を導入し、採用プロセスを一元管理しています。

ATSや関連ツールを使うことで、歩留まり改善にどのようなメリットがあるのかを見てみましょう。

採用管理ツール(ATS)などの活用法
  • 歩留まり率の見える化: ATSには応募者データや選考ステータスを管理する機能があり、レポート画面で各選考フェーズの人数や通過率を自動集計できます。手作業でExcel集計する手間を省き、リアルタイムに歩留まりを把握できるため、ボトルネックの早期発見に役立ちます。
  • 候補者との円滑なやり取り: ATSには応募者への一斉メール送信や面接日程調整機能が備わっているものが多く、コミュニケーションの迅速化に寄与します。定型メッセージ(応募受付、面接案内、合否連絡など)をテンプレート化しておき、ワンクリックで送信することで連絡漏れや遅延を防止できます。
  • 選考プロセスの効率化: Web面接ツールや適性検査ツールとの連携により、オンラインで選考を完結しやすくなります。たとえばATS上からオンライン面接のURL発行や、適性検査結果の自動取り込みができれば、候補者も移動負担なくスムーズに選考が進みます。評価シートのデジタル化も行えば、面接官が評価をすぐ共有でき意思決定のスピードアップにつながります。
  • データに基づく改善: ATSに蓄積されたデータを分析することで、採用の改善点が見えてきます。例えば「ある求人媒体経由の応募者の内定率が低い」とわかれば媒体戦略の見直しを検討できますし、「特定面接官の面接通過率が極端に低い」と判明すれば面接官トレーニングの必要性が浮上します。属人的な勘ではなくデータドリブンで採用プロセスを最適化できるのがツール活用の強みです。
  • 候補者体験の向上: システムを使うことで候補者への対応スピードが増し、管理ミスも減るため、結果的にCX向上にもつながります。応募フォームのUI改善やチャットボットによる質問対応など、候補者視点の機能を備えるツールもあります。応募者にとって煩雑さを感じないスムーズな選考運営は、それだけで他社との差別化ポイントになります。

このように、ATSをはじめとする採用管理ツールは歩留まり改善の強い味方です。

まだ導入していない場合は検討してみる価値がありますし、既に使っている場合も上記のような機能を十分に活用できているか振り返ってみましょう。

ただしシステムはあくまで支援ツールですので、重要なのは現場の意識改革と改善意欲です。

ツールを有効活用しつつ、人事担当者として歩留まり改善の舵取りをしていくことが求められます。

まとめ:歩留まり改善で採用効率と質をアップしよう

採用歩留まりの向上テクニックについて、定義から原因分析、具体策まで幅広く解説してきました。

最後に、本記事の内容を簡単に振り返ります。

まとめ
  • 採用歩留まりとは各選考ステップを通過した割合を示す指標であり、歩留まり率が低いと「非効率な採用」を意味します。人事担当者はこの数値を把握し、改善すべきポイントを見極めましょう。​
  • 新卒・中途で歩留まりの傾向は異なり、新卒は母集団が大きい分最終的な採用率は低め、中途は早期離脱があるものの内定承諾率が高いなどの特徴があります。
  • 歩留まり低下の原因は候補者側・企業側それぞれにあり、他社オファーやミスマッチ、企業の対応遅れや情報乖離、プロセスの長期化など様々です。​
  • 自社の採用データを分析し、どの段階で歩留まりが落ちているか(ボトルネック)を特定することが第一歩です。平均値との比較や辞退理由の収集も有効です。
  • 段階別の改善策として、募集要項の見直し、選考基準の調整、面接日程の柔軟化、面接官トレーニング、オファー面の強化、内定者フォロー徹底などを実践しましょう。それぞれのフェーズで候補者視点を意識することが成功のポイントです。
  • 候補者体験(CX)の向上は全フェーズにわたり歩留まり改善に効きます。迅速・丁寧な対応、良好な面接体験、フィードバック提供、候補者の声を活かした改善などでCXを高めましょう。
  • ATSなど採用ツールも積極的に活用し、データ管理・分析の効率化やコミュニケーション円滑化を図ることで、人為的ミスや遅延を減らし歩留まり向上につなげます。

採用歩留まりは改善すればすぐに効果が数字に表れやすい分野です。

歩留まり率が上がれば、限られた応募者からより多くの人材を確保でき、採用コストの削減や質の向上にも寄与します。

人事担当者として、自社の採用フローを定期的に振り返り、「どこに無駄があるか」「どこを改善すればもっと良い人材を逃さずに済むか」をデータに基づいて考えてみてください。

読者の皆さんもぜひ本記事の内容を参考に、自社の採用状況を分析し、具体的な改善アクションを起こしてみましょう。

歩留まり改善の積み重ねが、貴社の採用力強化と優秀な人材確保につながるはずです。

採用活動の効率と成果を高め、ぜひ採用成功を勝ち取ってください!

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