企業の採用活動において、業務委託と採用代行の活用が注目されています。
人材不足が深刻化する中、効率的な採用活動を実現するための選択肢として、採用業務委託が増加傾向にです。
本記事では、採用業務委託の基本的な概念から具体的なメリットまで、詳しく解説します。
採用業務委託とは?採用代行と違いはあるの?
採用業務委託は、企業の採用活動全般もしくは一部を外部の専門業者に委託するサービスです。
採用計画の立案から、求人原稿の作成、応募者対応、面接調整まで、幅広い業務を専門家のサポートのもとで実施できます。
一方、採用代行は企業に代わって採用活動を行うサービスで、職業安定法の規制対象となります。
採用業務委託では、最終的な採用決定権は企業側にあり、専門家のアドバイスを受けながら主体的に採用活動を進められる点が特徴です。
採用業務委託をする5つの魅力
採用業務委託を活用することで、企業は採用活動の質を向上させながら、効率的な人材確保を実現できます。
専門家のノウハウと豊富な経験を活かすことで、採用成功率の向上や採用コストの最適化が期待できます。
また、企業の採用ブランドの構築にも効果的です。
1.人手不足が解消できる
採用業務委託を活用することで、人事部門の業務負担を大幅に軽減できます。
求人原稿の作成、応募者対応、面接日程調整など、採用活動に関わる煩雑な業務を専門家に任せられます。
人事担当者は採用の本質的な部分に注力でき、より戦略的な採用活動を展開可能です。
また、繁忙期や採用強化期間中でも、柔軟に対応できる体制を整えられます。
採用業務委託によって、既存の人事スタッフの労働時間削減と業務効率化を同時に達成できます。
2.求めている人材が確保しやすい
採用のプロフェッショナルが持つ豊富なネットワークと専門知識を活用することで、求める人材像に合致した候補者にアプローチしやすくなります。
業界や職種に特化した求人媒体の選定、効果的な求人原稿の作成、ターゲット層への的確なアプローチなど、専門的なノウハウを活かした採用戦略を展開可能です。
採用業務委託会社は、求職者の動向や市場トレンドにも精通しており、時代に即した採用手法を提案できます。
特に専門職や経験者採用において、高い効果を発揮します。
3.様々な採用手法の中から効果的なものをスムーズに選べる
採用業務委託会社は、多様な採用手法や最新のリクルーティング技術に精通しています。
求人媒体、採用管理システム、評価手法など、企業のニーズや市場動向に合わせて最適な採用手法を提案します。
デジタル技術を活用した採用手法や、SNSを活用した採用活動など、最新のトレンドを取り入れた戦略立案ができます。
4.面接・内定辞退を防止するノウハウを得られる
採用業務委託会社は、数多くの採用成功事例と失敗事例を分析しており、面接や内定辞退の防止に関する豊富なノウハウを有しています。
応募者とのコミュニケーション方法、面接での質問技法、内定者フォローの方法など、実践的なアドバイスを受けることができます。
面接官トレーニングや評価基準の策定支援など、採用品質の向上につながるサービスも提供可能です。
さらに、入社後の定着率向上に向けた施策についても、専門的な知見に基づくサポートを受けられます。
5.採用ブランディングを行える
採用業務委託を通じて、企業の採用ブランディングを効果的に展開できます。
採用サイトの制作や求人広告の作成、SNSでの情報発信など、一貫性のある採用コミュニケーションが実現可能です。
専門家のアドバイスを受けながら、企業の魅力を効果的に伝えるメッセージング戦略を構築できます。
採用市場における企業の認知度向上や、応募者からの好感度アップにつながり、長期的な採用競争力の強化が期待できるでしょう。
採用代行の主な仕事内容とは

採用代行サービスでは、企業の採用活動における多岐にわたる業務を一括して代行します。
採用戦略の立案から内定者フォローまで、包括的なサポート体制を構築することで、効率的な採用活動を実現。
採用代行会社は豊富な実績とノウハウを活かし、企業の採用課題に対して最適なソリューションを提供します。
採用計画・立案
採用代行会社は、企業の経営戦略や事業計画に基づいて、最適な採用計画を策定します。
必要な人材の要件定義、採用時期の設定、採用予算の策定など、採用活動の基盤となる重要な計画を立案し、実現可能性の高い採用戦略を提案します。
採用計画には、短期的な人材ニーズだけでなく、中長期的な組織づくりの視点も含まれていて有用です。
母集団の形成
採用代行会社は、求める人材像に合致した候補者を集めるため、効果的な母集団形成を行います。
求人媒体の選定、求人原稿の作成、採用説明会の企画運営など、多様なチャネルを活用して優秀な人材にアプローチ。
また、自社のネットワークを活用したスカウティングや、SNSを活用したダイレクトリクルーティングなども展開し、質の高い母集団を形成します。
応募者の管理
応募者とのコミュニケーション管理や書類選考、面接日程の調整など、応募者に関する一連の管理業務を代行します。
採用管理システムを活用し、応募者情報の一元管理や選考状況の可視化を実現します。
また、応募者からの問い合わせ対応や、選考結果の通知など、きめ細かなコミュニケーションを維持することで、応募者体験の向上を図ることが可能です。
選考業務
面接の設定や調整、評価基準の策定支援、面接官のトレーニングなど、選考に関する業務を包括的にサポートします。
選考プロセスの設計から、評価シートの作成、合否判定会議の運営まで、公平性と効率性を両立した選考体制が構築可能です。
また、適性検査や課題の実施・評価など、多面的な評価手法も提供します。
内定者の入社前後におけるフォローアップ
内定通知の発行から入社後のフォローアップまで、一貫したサポート体制を提供します。
内定者懇親会の企画運営、入社前研修の実施、各種手続きの管理など、内定者の不安を解消し、スムーズな入社を支援するものです。
また、入社後の定着状況の確認や、フィードバックの収集など、採用活動の改善につながる情報収集も行います。
採用業務委託をする場合は合法のケースと違法のケースがあるので注意
採用業務委託を実施する際は、法的な観点からの確認が不可欠です。
職業安定法に基づく規制を理解し、適切な対応を取ることで、違法行為を防止できます。
企業と採用代行会社の双方が、法令遵守の意識を持って業務を進めることが重要です。
採用代行が委託募集に該当する場合は届出をしないと違法になる
職業安定法では、一定の採用代行業務が委託募集として規制対象です。
委託募集に該当する場合は、厚生労働大臣への届出が必要となり、無届での実施は違法となります。
採用活動の実態を正確に把握し、適切な手続きを行うことが求められます。
委託募集とは
委託募集とは、事業主が自社の従業員を雇用する際に、他者に募集活動の一部または全部を委託することです。
職業安定法第39条では、委託募集を行う場合の手続きや規制内容が定められています。
委託募集に該当する業務内容と該当しない業務内容
委託募集に該当する業務には、募集広告の掲載、応募者の受付、選考プロセスの代行などが含まれます。
一方、採用計画の立案支援や採用システムの提供など、募集活動に直接関与しない業務は該当しません。
業務内容を詳細に確認し、委託募集の該当性を判断することが重要です。
採用代行が違法にならないために行うべきチェックリスト
採用代行サービスを利用する際は、法令遵守の観点から必要な確認事項をチェックリスト化し、漏れなく確認することが重要です。
定期的な確認と更新により、コンプライアンスリスクを最小限に抑えることができます。
1.委託募集にあたるかどうか
実施予定の採用代行業務が委託募集に該当するかどうかを、業務内容に基づいて慎重に判断します。
募集活動への関与度合いや業務の実態を確認し、必要に応じて労働局への相談も検討します。
判断が難しい場合は、専門家へ相談してください。
2.委託募集にあたる場合は許認可を得ているかどうか
委託募集に該当する場合は、必要な届出や許可を取得しているかを確認します。
有料職業紹介事業の許可や、委託募集の届出など、必要な手続きを完了していることを確認します。
また、許可や届出の有効期限についても管理が必要です。
委託募集の許認可を得る時の流れ

委託募集の許認可を取得するには、正確な手続きと適切な書類提出が必要不可欠です。
手続きの遅延や不備がないよう、計画的に進めることが重要です。
また、申請内容に問題がないか、事前に専門家に相談することも推奨されます。
募集開始までの十分な準備期間を確保することで、スムーズな許認可取得が可能になります。
1.委託募集許可等申請書に必要事項を記載
委託募集許可等申請書には、企業情報や募集内容、委託する業務範囲などを詳細に記載する必要があります。
申請書には募集を行う地域、募集人員、従事させようとする業務の内容、賃金、労働時間その他の労働条件などの情報を明記してください。
記載内容に不備がある場合は再提出が必要となるため、慎重に確認作業を行います。
また、委託先事業者の情報や委託料金についても正確な情報を記載することが求められます。
2.書類の提出先が厚生労働省か都道府県労働局長かをチェック
募集地域の範囲によって、提出先が異なります。
複数の都道府県で募集を行う場合は厚生労働省への提出が必要となり、単一の都道府県内での募集の場合は、該当する都道府県の労働局長へ提出します。
提出先を誤ると手続きが無効となる可能性があるため、募集範囲を明確にし、適切な提出先を確認することが重要です。
3.提出期限を守って提出
委託募集を開始する予定日の30日前までに申請書類を提出する必要があります。
期限に余裕を持って提出することで、書類の不備があった場合の修正対応や、追加資料の提出にも対応可能です。
特に大規模な募集や複数地域での募集を予定している場合は、十分な準備期間を設けることが推奨されます。
また、提出後の進捗確認も忘れずに行います。
4.審査の結果を待つ
申請書類の提出後、厚生労働省または都道府県労働局による審査が行われます。
審査期間中は追加資料の提出や質問への回答を求められる場合があるため、迅速な対応ができるよう準備しておきます。
審査結果が出るまでの間、募集活動を開始することはできません。
審査の基準1.事業主の徳性
事業主の法令遵守状況や労務管理体制が審査されます。
過去の労働関係法令違反の有無、従業員の処遇状況、安全衛生管理体制などが確認対象です。
また、適切な募集活動を行う能力があるかどうかも審査の対象となります。
コンプライアンス体制の整備や、従業員の労働条件の適正化に日頃から取り組んでいることが重要です。
審査の基準2.募集にかかる労働条件
募集する職種の労働条件が、労働基準法などの関係法令に適合しているかどうかが審査されます。
賃金、労働時間、休日、福利厚生などの労働条件が、業界水準や地域の相場と比較して適切であることが求められます。
また、募集内容と実際の労働条件に相違がないことも重要な審査ポイントです。
審査の基準3.報酬
委託募集にかかる報酬が適正な範囲内であるかどうかが審査されます。
報酬額は、募集に要する実費の範囲内であることが求められ、過度に高額な報酬設定は認められません。
報酬の算定根拠や支払方法についても、透明性と合理性が求められます。
また、報酬に関する契約内容が明確に定められていることも重要です。
採用代行会社を選ぶ際にチェックするべき5つのポイント
採用代行会社の選定は、採用活動の成否を左右する重要な判断となります。
優れた採用代行会社を見極めるためには、複数の観点から慎重な評価が必要です。
企業の採用ニーズと代行会社の提供サービスが合致しているかを見極めることで、効果的な採用活動が実現できます。
1.許可を取得している会社か
採用代行会社が必要な許認可を取得しているかは、最優先で確認すべき事項です。
職業安定法に基づく有料職業紹介事業の許可や委託募集の届出など、法令で定められた資格を保持していることを確認します。
許可番号の有効性や更新状況も併せて確認することで、コンプライアンスリスクが回避可能です。
また、プライバシーマークやISO認証など、情報管理体制の整備状況も重要な判断材料となります。
2.委託する業務内容に対応できるか
採用代行会社のサービス内容と、自社が委託したい業務内容との整合性を確認します。
募集職種や採用規模に応じた対応実績があるか、必要なサポート体制が整っているかなどを詳細に確認します。
また、採用管理システムなど、必要なツールやインフラが整備されているかも確認が必要です。
3.実績は十分にあるか
採用代行会社の過去の実績や成功事例を確認します。
同業界や類似規模の企業での採用支援実績、採用成功率、定着率などの具体的な数値を確認することで、サービスの品質が評価可能に。
また、過去のクライアント企業からの評価や推薦状なども参考になります。
実績の確認にあたっては、単なる数値だけでなく、課題解決のプロセスや、クライアント企業との協業体制についても把握することが重要です。
4.柔軟性がありコミュニケーションがとりやすいか
採用代行会社との円滑なコミュニケーションは、採用活動の成功に不可欠です。
担当者の対応力や提案力、緊急時の対応体制など、実務面でのサポート体制を確認します。
また、採用市場の変化や企業のニーズ変更に対する柔軟な対応力も重要な選定ポイントとなります。
定期的な報告会や進捗確認の方法、問題発生時の対応プロセスなども事前に確認しておくことが望ましいです。
5.見積費用は妥当か
採用代行サービスの費用対効果を慎重に検討します。基本料金や成功報酬の料率、追加オプションの費用など、料金体系の透明性を確認します。
また、類似サービスを提供する他社との比較や、期待される採用効果との費用対効果も検討が必要です。
見積もりの際は、隠れコストや追加費用の発生条件についても明確に確認することが重要です。
長期的な採用コストの最適化の観点から、費用の妥当性を判断します。
まとめ
採用業務委託は、企業の採用活動を効率化し、質の高い人材確保を実現する有効な手段です。
ただし、委託募集に該当する場合は適切な許認可の取得が必要となります。
採用代行会社の選定においては、法的要件の充足、サービス内容の適合性、実績、コミュニケーション力、費用対効果など、多角的な視点からの評価が重要です。
適切な採用業務委託の活用により、企業の採用課題を効果的に解決し、持続的な組織成長を実現することができます。
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