「リファレンスチェックって何をされるの?」「どんなことを聞かれるの?」「断ってもいいの?」
転職活動中、企業からリファレンスチェックを案内されて戸惑う方も多いのではないでしょうか。
リファレンスチェックとは、採用候補者が過去にどのように働いていたかを確認するために、前職の上司や同僚など第三者にヒアリングを行うプロセスのことです。
特に中途採用の場面では、書類や面接だけでは把握しきれない人物像や実績を客観的に知る手段として、多くの企業が導入しています。
本記事では、リファレンスチェックの基本的な意味や企業が実施する目的、具体的な流れや質問内容、そして転職希望者が取るべき対策までを徹底的に解説します。
リファレンスチェックとは?企業が実施する目的を理解しよう
リファレンスチェックとは、採用候補者(主に中途応募者)について前職や現職の同僚・上司など第三者に確認を取る「職歴・人物調査」のことです。
応募者本人からではなく、以前一緒に働いた関係者から勤務状況や人柄、実績をヒアリングし、書類や面接だけではわからない情報を得る狙いがあります。
もともと外資系企業や金融業界などで導入されていた手法ですが、近年では一般企業でも導入が増えてきています(すべての企業が実施するわけではありません)。
実際、2021年の調査ではリファレンスチェック実施率は外資系企業で58%、日系企業で23%に上るとの結果が報告されています。
なおバックグラウンドチェック(背景調査)と呼ばれる手法もありますが、こちらは主に学歴・職歴や犯罪歴など経歴の真偽を専門機関が調査するもので、リファレンスチェックは前職での働きぶりや人柄評価に焦点を当て、採用企業の人事が行う点が異なります。
- 採用ミスマッチの防止:書類や面接だけでは見抜けなかったギャップを事前に把握し、入社後のミスマッチ(双方にとっての不幸)を防ぐ。
- 経歴・実績の客観的裏付け:履歴書や職務経歴書の内容に誇張や虚偽がないか、在籍期間や実績を第三者に確認する。
- 人物像・カルチャーフィットの確認:前職での勤務態度や同僚との関係性などを聞き、候補者の人柄や強み・弱みを多角的に把握する。組織風土に合った人材かを見極め、配置や育成方針の参考にする。
こうした目的から、企業はリファレンスチェックを採用判断の材料にします。
また、リファレンスチェックを実施する際には法的な留意点もあります。
リファレンスチェックそのものは違法ではありませんが、候補者の情報は個人データに当たるため本人の同意なしに行えば個人情報保護法に抵触する恐れがあります。
そのため企業は事前に候補者へ実施の説明と同意取得を必ず行います。
同時に、推薦者となる第三者にも同意を得て協力を依頼することが必要です。
リファレンスチェックを受けるメリット
リファレンスチェックと聞くと「会社が応募者を評価するためのもの」という印象を受けがちですが、候補者にとってもメリットがあります。
企業から見た客観評価を得られるだけでなく、以下のように自分自身のアピールや入社後の安心にもつながります。
- 書類や面接で伝えきれない強みをアピールできる:第三者の評価によって、自分では言いづらかった長所や実績を裏付けてもらえます。客観的な証言により説得力が増し、応募者自身では伝えきれない強みを補完できるでしょう。
- 自身の評価の客観的裏付けになる:前職上司などから高い評価を得ていることが証明されれば、採用側も安心材料とできます。いわばお墨付きを得た形となり、内定獲得後の待遇や配属にも良い影響を及ぼす可能性があります。
- 入社後のミスマッチを候補者側も防げる:リファレンスチェックを通じて企業があなたの人となりを深く理解すれば、お互い認識違いが減ります。結果として配属先もあなたに合った環境になりやすく、早期離職の防止につながります。
- 企業への誠実性・信頼性を示す機会になる:リファレンスチェックに協力的な姿勢を見せることは、裏表のない誠実な人柄であるアピールにもなります。前職関係者からも太鼓判を押してもらえれば、企業からの信頼獲得にも直截します。
このように、リファレンスチェックは単なる「身辺調査」ではなく、応募者が自分の強みを再認識し、安心して入社できるためのプロセスとも言えます。
不安に感じる必要はなく、前向きに活用しましょう。
リファレンスチェックはいつ?一般的な流れと手順を把握する
リファレンスチェックが実施されるタイミングは、企業や採用プロセスによって多少異なりますが、多くの場合は最終選考の終了後から内定を出す前に行われます。
最終面接に合格し「最終候補」となった段階で、最終確認として実施されるケースが一般的です。
リファレンスチェックの基本的な流れは次のとおりです。
- 候補者への実施連絡と同意取得:選考通過後、採用企業から候補者に「リファレンスチェックを行いたい」旨が伝えられます。目的や手順が説明され、候補者の同意が求められます(同意がなければ実施不可)。
- 推薦者の選定と企業への情報提供:候補者はリファレンスチェックに協力してくれる推薦者(リファレンス先)を選びます。通常は前職または現職の上司・同僚など計2名程度が一般的です。候補者から推薦者本人へ事前にお願いと了承を取り付けた上で、氏名・連絡先・関係性などを企業に伝えます。
- 企業(または調査代行会社)から推薦者への依頼連絡:採用企業の人事担当者か、外部のリファレンスチェック専門会社が推薦者に直接連絡し、調査への協力を依頼します。メールや電話で日程調整を行い、回答方法(電話インタビュー、Webアンケート等)を案内します。
- 推薦者へのヒアリング実施:予定された方法で推薦者に対してヒアリング(インタビュー)が行われます。実施手段は企業により様々で、電話での口頭インタビュー、メールでの質問票送付、専用Webフォームへの記入依頼などがあります。所要時間は一人あたり30分〜1時間程度が目安です。
- 結果のフィードバックと評価:ヒアリング内容は採用企業側で取りまとめられ、人事担当者や現場責任者が内容を確認します。候補者の経歴や人柄について、面接時の評価と突き合わせて最終的な採用可否や入社後の配属判断に活かされます。特に問題がなければそのまま内定となり、万一重大な齟齬が判明した場合は選考見送り等の判断が下されます。
以上が基本的な手順です。
リファレンスチェックにかかる期間は、一般的に数日〜1週間程度です。
いずれにせよ、候補者はこの期間中の結果連絡を待つことになります。
何を聞かれる?リファレンスチェックの主な質問内容
リファレンスチェックでは具体的にどんな質問が推薦者に投げかけられるのでしょうか。
基本的には「その候補者がどのような人物で、どのような働きぶりだったか」を知るための質問が中心です。
主な質問項目には、前職または現職での在籍期間・役職、職務内容や実績、仕事に取り組む姿勢、対人関係やコミュニケーション、保有スキルや長所・短所などが挙げられます。
加えて、退職理由や勤務中に問題行動(遅刻・ミス等)がなかったかといった点についても確認されるでしょう。
質問の際はまず推薦者自身の立場も明らかにされます。
推薦者が候補者とどのような関係で何年間一緒に働いたか(元上司なのか同僚なのか、直属で何年指導したか等)を企業側が把握した上で、本題の質問に移ります。
推薦者が回答に困らないよう情報を整理して伝えておきましょう。
- 「○○さん(候補者)と一緒に働いていた期間と関係を教えてください」(例:2018年〜2021年まで直属の上司として指導)
- 「候補者の担当業務と役割、および主な実績を教えてください」
- 「候補者の長所や強みは何だと思いますか? また、課題と思われる点はありますか?」
- 「職場での人間関係やコミュニケーションは円滑でしたか?」
- 「採用しようとしているポジション(応募ポジション)で十分活躍できる人物だと思いますか?」
- 「退職(転職)した理由を可能な範囲で教えてください。また、率直に言ってまた一緒に働きたいと思いますか?」
企業によって質問の細部は異なりますが
- 仕事ぶりの再現性(また一緒に働きたいと思える人物か)
- 人柄・協調性(チームに馴染めそうか)
- スキルの信頼性(経歴に嘘や大げさな表現はないか)
などを確認する意図が共通しています。
候補者としては、自分のどのエピソードが話されそうかを想像し、面接時に話した内容との一貫性が保てているか振り返っておくとよいでしょう。
【転職者必見】リファレンスチェックの対策と注意点
リファレンスチェックを受けるにあたり、転職者が事前に準備・注意すべきポイントをまとめます。
事前の対策によって結果が左右されるわけではありませんが、円滑に進めるために以下の点を押さえておきましょう。
推薦者の選び方と依頼のマナー
まず肝心なのは誰に推薦者を頼むかです。
一般的には前職の直属上司が最有力ですが、事情によってはさらに前の職場の上司や、現職の信頼できる同僚・先輩なども候補になります。
あなたの仕事ぶりをよく知り、ポジティブな評価をしてくれる方を選ぶのがポイントです。
役職が高いほど信憑性が増す傾向にありますが、短期間しか一緒に働いていない人よりは、長期間じっくり指導してくれた上司の方が具体的な証言をもらえるでしょう。
いきなり採用企業から問い合わせが行くと先方も驚いてしまうため、必ず自分から直接お願いをしましょう。
電話やメールで構いませんが、失礼のないよう現在の状況(転職活動中であること、最終候補に残りリファレンスチェックを依頼されていること)を説明し、協力の依頼と快諾の確認を取ります。
その際に応募企業の情報や応募ポジション、伝えておきたい強み・エピソードなども共有しておくと親切です。
忙しい中時間を取ってもらうお願いになるため、快諾いただいた後はお礼も忘れずに伝えましょう。
リファレンスチェックは拒否できる?そのリスクとは
結論から言えば、候補者がリファレンスチェックを拒否すること自体は可能です。
企業側も本人の同意なしに強行はできません。
ただし、正当な理由なく拒否すれば選考辞退とみなされるリスクが高い点に注意が必要です。
「何か知られたくないマイナス情報があるのでは?」と疑われ、事実上その時点で不採用となってしまうケースもあります。
企業によってはリファレンスチェックを採用プロセスにおける必須条件としているため、拒否=選考中止となることもあるでしょう。
とはいえ、拒否せざるを得ない事情がある場合は、率直に企業に相談することをおすすめします。
【現在の職場に転職活動を知られたくない】というケースが代表例です。
「現職の上司にはまだ退職の話をしていないので難しい」と正直に伝え、代わりに前職の上司など別の推薦者を立てられないか相談してみましょう。
企業側も事情を理解してくれることが多く、前職や前々職の上司など代替の推薦者を提案すれば柔軟に対応してもらえる可能性があります。
在職中にリファレンスチェックを受ける場合の注意点
現職中に転職活動をしており、内定前にリファレンスチェックを受ける場合は慎重な配慮が必要です。
上記の通り、現職の上司に依頼するのは難しいケースが多いため、可能であれば現職以外の推薦者を選びましょう。
現職からどうしても選ぶ必要がある場合は、信頼できる同僚や先輩など、あなたが転職活動中であることを打ち明けても問題ない方に限定します。
その際も「社内では極秘にしているので…」と口外しないようお願いすることが大切です。
企業側に対しても、現職に照会する場合は匿名で進めるなどの配慮を依頼して構いません。
多くの企業は候補者の不利益にならないよう配慮してくれますし、無理に現職に実施することはありません。
不安な点があれば事前に人事に相談し、推薦者の選定先(現職以外にしてほしい等)について希望を伝えておきましょう。
ネガティブな情報を伝えられたらどうする?正直に話すべきか
リファレンスチェックでは、自分でも気づいていなかった弱点や課題が浮き彫りになる可能性もあります。
また万一、推薦者があなたの業務上のミスやトラブルについてネガティブな情報を提供した場合、採用担当者から後日そのことについて確認されるケースも考えられます。
こうした場合にどう対応すべきか、悩む人もいるでしょう。
基本的には、事前に伝えておくのが最善です。
自分でも「これがバレたら不利かも…」と心当たりがあることは、リファレンスチェックで指摘される前に自分から正直に打ち明けておく方が賢明です。
例えば過去に成績不振で部署異動した経験がある、上司と意見が合わず衝突したことがある等、面接時に聞かれなかったネガティブ要素があるなら、先に自分の口から説明しておきましょう。
その際、「その経験から何を学び、今後どう活かすか」を冷静に語れば、大きなマイナスにはならないどころか誠実さのアピールになります。
もしリファレンスチェック後に企業側から事実確認の問い合わせがあった場合も、虚偽なく正直に答えることが肝心です。
不都合なエピソードであっても、「ご指摘の点は事実です。当時は至らない部分がありましたが、現在は○○のように改善しています。」といった具合に、改善策や現在の成長を示し前向きな姿勢を伝えることが大切です。
誠意を持って対応すれば、多少のマイナス要素があっても信頼回復は十分可能です。
リファレンスチェックに関するよくある質問(Q&A)
最後に、リファレンスチェックについて転職者や採用担当者からよく聞かれる疑問をQ&A形式でまとめました。
Q1. リファレンスチェックの結果は自分にも教えてもらえる?
A1. 通常、リファレンスチェックの詳細な結果が候補者本人に共有されることはありません。
推薦者から得られた情報はあくまで企業内部での評価材料として扱われます。
ネガティブな内容が含まれていても企業側から積極的に開示されることはなく、結果として採用可否の判断に反映されるのみです。
Q2. 外資系企業のリファレンスチェックは何か特別な点があるの?
A2. 外資系企業ではリファレンスチェックが当たり前のプロセスとして定着している場合が多く、候補者も前職の上司など複数のリファレンスを提示するのが一般的です。
質問内容や手順自体に大きな違いはありませんが、実施率が高い点が特徴と言えるでしょう。
一方、日系企業でも近年は導入が増えており、企業規模やポジションによっては外資系でなくても行われます。
Q3. リファレンスチェック代行会社とは何ですか?
A3. リファレンスチェック代行会社とは、その名の通り企業に代わってリファレンスチェック業務を行ってくれる専門業者です。
候補者から推薦者リストを受け取り、プロの第三者として推薦者への連絡・ヒアリング・レポート作成までを請け負います。
企業側にとっては調査の手間を省けるだけでなく、匿名性が保たれることで推薦者から率直な意見を引き出しやすいメリットもあります。
近年はWebアンケートやオンラインで完結できるサービスも登場しており、質問設計や本人確認のノウハウも蓄積された信頼性の高いサービスが提供されています。
代表的なリファレンスチェック代行サービスとして、「back check(バックチェック)」「ASHIATO(アシアト)」など複数の企業があり、導入企業も増えています。
まとめ:リファレンスチェックを正しく理解し、自信を持って転職活動を進めよう
リファレンスチェックは、企業が採用の最終段階で行う確認プロセスであり、決して怪しい詮索ではありません。
むしろ、ポジティブな目的(ミスマッチ防止や信頼醸成)のために行われるものです。
応募者にとっても自分をより深く知ってもらうチャンスですから、依頼された際は驚かずに落ち着いて対応しましょう。
推薦者への根回しや誠実な情報提供など、基本的な対策を講じておけば怖れる必要はありません。
昨今、リファレンスチェックは外資系のみならず日系企業でも一般化しつつあります。
適切に対応すれば内定取り消しなど不利益を被るケースはほとんどありません。
そうすれば企業側にも好印象となり、きっと良い結果に結びつくでしょう。
リファレンスチェックを味方につけて、自信を持って転職活動を進めてください。
リファレンスチェックを正しく理解し活用することで、企業との相互理解が深まり、より良いキャリア選択につながるでしょう。
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