近年、人材獲得競争が激化する中で、SNSを活用した採用活動が中小企業でも注目を集めています。
その中でも、かつて「Twitter」として知られ、現在「X」と呼ばれるプラットフォームを使った採用手法、いわゆる「X(旧Twitter)採用」が新たな採用チャネルとして台頭しています。
特に知名度や予算で大企業に劣る中小企業にとって、無料で始められるX採用は有望な手段となり得ます。
本記事では、中小企業の採用担当者向けに、X(旧Twitter)採用の基本から具体的なメリット・デメリット、さらに成功のためのポイントや運用方法について詳しく解説します。
X(旧Twitter)採用が向いている企業の特徴や、他のSNSとの比較、よくある疑問への回答も取り上げます。
貴社の採用戦略にXを取り入れる際の参考にしてください。
X(旧Twitter)採用とは
X(旧Twitter)採用とは、SNS「X(エックス)」(旧称Twitter)を活用して行う採用活動のことです。
企業が公式の採用アカウントや採用担当者の個人アカウントを通じ、求人情報や会社の文化、日々の社内の様子などを発信し、興味を持った求職者と直接コミュニケーションを取る手法を指します。
X(旧Twitter)の特徴であるリアルタイム性と拡散力により、最新の求人情報や企業のニュースを即座に多くの人に伝えることが可能です。
また、投稿への返信(リプライ)やダイレクトメッセージ(DM)を通じて、求職者から直接問い合わせが来たり、企業側から声を掛けたりと、双方向のやり取りが生まれやすい点も従来の求人媒体にはない強みです。
近年、このようなXを活用した採用手法が注目される背景には、若年層のX利用率の高さがあります。
例えば、ある調査では10代の約85%、20代の約80%がXのアカウントを保有していることが報告されており、30代・40代でも過半数が利用しています。
国内のXユーザー数は4,500万人以上と推計されており、InstagramやFacebookなど他の主要SNSを上回る普及率を示しています。
こうした幅広いユーザー層にアプローチできる点から、中小企業にとってもXは魅力的な採用プラットフォームとなっているのです。
X(旧Twitter)で採用活動をするメリット5つ
X(旧Twitter)を採用に活用することには、以下のような5つのメリットがあります。
- 幅広い層にリーチできる: Xは多くのユーザーが利用しており、求人情報が広範囲に届きます。リツイート機能を活用することで予想外の層にもリーチ可能です。
- 企業の文化や雰囲気を伝えやすい: Xでは写真や動画を使って、企業の雰囲気や価値観をリアルに伝えられます。求職者は投稿を通じて働くイメージを掴みやすくなります。
- コミュニケーションを通じて関係を築ける: Xでは双方向のやり取りが可能で、応募前からカジュアルな関係を築けます。企業と求職者の距離感が縮まり、好印象を与えやすくなります。
- 採用コストを抑えられる: Xでは求人情報の発信に費用がかからず、他の採用手段より低コストで活動できます。運用が進むと、費用をかけずに広範囲にリーチできるようになります。
- トレンドに敏感な求職者にアプローチできる: Xは最新のトレンドを追うユーザーが多く、トレンドに関心がある人材にリーチできます。人気のハッシュタグを活用すれば、効果的に採用情報を広められます。
X(旧Twitter)で採用活動をするデメリット5つ
一方で、Xを採用に活用するには以下のような5つのデメリットにも注意が必要です。
- 炎上リスクがある: Xは情報が広まりやすいため、不適切な投稿が炎上につながり、企業イメージが低下するリスクがあります。万一炎上した場合、素早い謝罪・対応が求められます。
- 信頼性の確保が難しい: Xでは情報の信頼性が疑問視されることがあり、特に知名度の低い企業は求職者に対して信用を得るのが難しいです。信頼性を補完するため、公式サイトや他の信頼できる媒体と併用する必要があります。
- 求める人材に届かないことがある: Xの情報は膨大で、必ずしもターゲット層に届くとは限りません。特に専門性の高い人材や特定の層にリーチするには他の採用手段と併用する必要があります。
- 採用の管理が複雑になりやすい: X経由での応募や問い合わせが増えると、従来の採用プロセスに加えてSNS上での対応が求められます。管理が複雑になり、情報漏れや誤解を防ぐためには、事前に対応ルールを整える必要があります。
- 長期的な運用が必要: X採用は一度だけの投稿で成果が出るものではなく、継続的な情報発信が必要です。アカウントの育成や信頼関係の構築には時間がかかり、長期的な運用が求められます。
X(旧Twitter)採用が向いている企業の特徴
では、どういった企業がX採用に適しているのでしょうか。一般的に、次のような特徴を持つ企業はX(旧Twitter)採用との相性が良いと考えられます。
- IT・クリエイティブ系の企業: エンジニアやデザイナーを求める企業にはX採用が効果的です。デジタルスキルを持つ求職者はSNSを活用して情報収集し、Xを通じて企業の発信に興味を持つことが多いためです。
- スタートアップやベンチャー企業: 大手企業と競争するのが難しいスタートアップにとって、Xを活用した低コストでの採用が魅力的です。SNSでの魅力的な発信により、ターゲット層に直接アプローチできます。
- 若手や個人とつながりたい企業: 若手人材や個人とフランクにコミュニケーションを取る企業にもXは適しています。SNSを通じて本音や熱意を早期に知り、相互理解に基づいた採用が可能になります。
- 企業の文化や価値観を発信したい企業: 自社のカルチャーや価値観を重視した採用を行いたい企業にはXが最適です。SNSで日常的に社内エピソードや経営理念を発信することで、共感する人材を集めることができます。
- 採用コストを抑えたい企業: 中小企業で人事予算が限られている場合、Xは無料で利用できるため非常に魅力的です。広告費をかけずに効率的に採用活動を行い、必要な人材にリーチすることができます。
- SNSマーケティングやPR活動が得意な企業: SNS運用のノウハウがある企業は、X採用をスムーズに展開できます。既に築いているフォロワー基盤を活用することで、効率よく採用活動を行うことが可能です。
X(旧Twitter)で採用活動で成功するためのポイント
X(旧Twitter)採用で成果を出すためには、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
- ターゲットを設定する: 人材のターゲット層を明確にし、年齢層や職種、スキルに応じたコンテンツを発信します。新卒向けやエンジニア採用など、層に響く情報を発信しましょう。
- 定期的・継続的に採用情報を発信する: 定期的に求人情報や企業のトピックスを投稿し、フォロワーとの接点を途切れさせないようにしましょう。週数回の更新で信頼感を築きます。
- 社員に個人アカウントでの発信を促す: 社員にもXで情報発信をしてもらい、企業のリアルな魅力を伝えます。社員インフルエンサーを育成して、採用候補者との接点を増やします。
- DM(ダイレクトメッセージ)を活用する: DMでフォロワーや反応したユーザーと直接やり取りし、興味を引くことができます。簡単に応募のきっかけを作れる費用対効果の高い方法です。
- 企業文化や価値観の発信に動画や画像を活用する: 画像や動画を使い、企業の雰囲気や文化を視覚的に伝えます。社内イベントや社員インタビューを投稿して、求職者に深い理解を促進します。
採用活動で使われるSNSとX(旧Twitter)の比較
近年、採用活動にはX以外にも様々なSNSが活用されています。
代表的なものをXと比較してみましょう。
SNS | 特徴 |
---|---|
ビジュアル重視のSNSで、企業文化や職場の雰囲気を画像や動画でアピールできます。若年層や女性ユーザーに強く、ファッションや美容業界で効果的ですが、求人要件の詳細には工夫が必要です。 | |
実名登録のSNSで、企業ページを通じて長文投稿やイベント告知が可能です。中途採用や社員のつながり経由の紹介に有効ですが、新卒採用には効果が限定的です。 | |
ビジネス特化型SNSで、職務経歴やスキルを詳細に登録でき、専門職の採用に適しています。日本では新卒層へのリーチが少なく、主に中途採用向けです。 | |
TikTok | 若者に人気のショート動画プラットフォームで、高いエンゲージメントを得られます。企画力が求められ、採用目的のコンテンツは慎重に作成する必要がありますが、拡散力は抜群です。 |
LINE | 国内最多の月間アクティブユーザーを持つコミュニケーションアプリで、企業が公式アカウントを通じてダイレクトに情報を送信できます。新規候補者の開拓よりも、フォローアップに適しています。 |
以上のように、それぞれのSNSにはユーザー層や得意分野があります。
X(旧Twitter)の強みは、テキスト主体で情報拡散力が高く、リアルタイム性と双方向コミュニケーションに優れている点です。
他のSNSと比べ、幅広い年代にリーチしやすく(国内利用者約4,500万人)、求人情報の拡散や会話の発生が起こりやすいプラットフォームと言えます。
X(旧Twitter)採用の進め方
X(旧Twitter)を活用した採用活動の基本的な流れを、ステップごとに解説します。
- 採用戦略を立てる: 目標とする人材像、ターゲット層、採用人数、タイムラインを明確にし、コンテンツ企画や運用体制を検討。SNS運用担当者や基本的なガイドラインを整備しておきます。
- Xの採用専用アカウントを開設する: 企業公式アカウントとは別に、採用情報専用のアカウントを作成。プロフィールには会社概要や採用ページのリンクを載せ、採用情報を発信しやすい体制にします。
- 定期的に採用情報を発信する: 求人情報や社内トピックを継続的に発信し、求人告知を目立たせるために固定ツイートを活用。投稿を途切れさせないことで、認知を広げていきます。
- 社員による発信を促す: 社員自身がXで情報発信し、求人ツイートをリポストして拡散。社内SNS研修で発信メンバーを育成し、企業の魅力を伝えます。
- DMやリプライで求職者とコミュニケーションを取る: コメントやDMで積極的に求職者とやり取りし、応募に繋がるようサポート。親しみを持って応募者に案内を行い、スムーズな選考への移行を図ります。
- 応募者を選考・面接する: SNSでのやり取りを活かして面接をリラックスした雰囲気で進行。通常の選考基準を守り、公平な選考を行います。
- 採用後も関係を継続する: 入社前にSNSで交流を深め、社員の視点で感じたことを発信。SNSでの関係を続け、次回の採用活動に役立てます。
X(旧Twitter)を活用した採用活動の方法
X(旧Twitter)上で具体的にどのような投稿をすればよいか、代表的な方法を3つ紹介します。
- 社内の様子を発信する: 日常のオフィス風景や社員の声、社内イベントの写真を投稿し、企業の雰囲気を伝える。ちょっとした出来事を発信することで親近感を与え、求職者に「働きたい」と感じさせるきっかけを作ります。
- 求人情報を掲載する: 募集職種や応募条件などを簡潔にツイートし、詳細は採用ページへのリンクを貼る。ハッシュタグ(#求人 #採用募集 #エンジニア募集)を付けて、より多くの求職者に見つけてもらいやすくします。
- 説明会の告知をする: 会社説明会や採用イベント、オンラインセミナーなどをXで告知し、開催日時や参加方法を発信。リマインド投稿や写真付きの報告ツイートで、フォロワーにイベントの雰囲気を伝え、Twitterスペースでのカジュアルな説明会も活用します。
X(旧Twitter)採用に関するよくある質問
Q. X(旧Twitter)広告のメリットは?
A. X上で有料の求人広告(プロモーションツイート)を出稿すると、フォロワー以外のユーザーのタイムラインにも自社の求人情報を表示できます。
その最大のメリットは、Xの持つ膨大なユーザーデータを活用して表示対象を細かく絞り込める点です。
地域・年齢・興味関心など条件を設定して必要な層にピンポイントでリーチできるため、効率的です。
また、広告経由のインプレッション数やクリック数など詳細なデータが取得できるため、採用マーケティングの効果測定と改善が行いやすい利点もあります。
Q. Xで求人を投稿するときのポイントは?
A. 140文字以内で端的に伝えるために、伝えるべき要点を絞ることがポイントです。
募集職種・仕事内容・勤務地など基本情報は漏れなく入れつつ、応募者に刺さる魅力を一言付け加えましょう(例:「急成長ベンチャーでエンジニア募集!最先端技術に触れられます」など)。
ハッシュタグも活用し、「#求人」「#○○募集」といったキーワードで求職者に見つけてもらいやすくします。
リンク先の採用ページを添付して詳しい情報を提供し、可能であればアイキャッチとなる画像も付けて投稿の視認性を高めましょう。
Q. Xでの採用活動を始めるには何が必要ですか?
A. 必須なのは公式のXアカウントと、発信するためのコンテンツ、そして運用に割けるリソースです。
まず自社用のXアカウントを開設(または既存アカウントを採用用途に活用)し、プロフィールやリンクを整備しましょう。
その上で、求人情報や社内紹介ネタなど投稿する内容を準備します。
開始時点ではフォロワーが少ないため、自社サイトや他のSNSで「Xで採用情報発信中!」と告知してフォローを促す工夫も有効です。
また、継続的に運用するには担当者の確保と社内の合意形成が必要です。
投稿ガイドラインや承認フローを決め、少なくとも数ヶ月は地道に更新を続ける計画を立ててからスタートしましょう。
Q. Xでの採用活動はどれくらいの期間で成果が出ますか?
A. 即座に応募が殺到するケースは稀で、多くは成果が出るまでにある程度の期間を要します。
目安としては、3ヶ月〜半年ほど継続して運用する中でフォロワーが増え、投稿への反応が徐々に高まってきてから応募につながるケースが増えてくるでしょう。
もちろん内容次第では早期に応募が得られることもありますが、期待通りの人材と出会うまでには忍耐強く発信を続けることが肝心です。
「最低◯ヶ月続ければ必ず成果が出る」と断言できるものではありませんが、短期で判断せず腰を据えて取り組むことで、着実に効果が蓄積されていくでしょう。
まとめ
SNS時代において、中小企業が人材獲得競争を勝ち抜くには、従来の手法に加えてX(旧Twitter)といった新たなチャネルを活用することが求められます。
X採用は、幅広い層へのリーチや企業文化の発信といったメリットがある一方で、炎上リスクや継続運用の手間といったデメリットも抱えています。
しかし、本記事で紹介したポイントを踏まえて戦略的に運用すれば、自社にマッチした人材と出会える有力な手段となるでしょう。
ターゲットを明確に定め、日々の発信と求職者との対話を粘り強く続けることで、企業のファンとも言える人材の母集団を形成できます。
加えて、他のSNSや採用手法とも上手く組み合わせて活用することで、より採用効率を高めることができます。
ぜひ自社の採用活動にX(旧Twitter)を取り入れ、時代の流れを味方につけた新しい採用アプローチに挑戦してみてください。
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