採用担当者にとって、人材の見極め方は永遠の課題です。
せっかく採用した人材が「思っていた人材と違う…」と感じたり、早期に離職してしまう採用ミスマッチは、企業に大きな損失をもたらします。
事実、新卒従業員の約3人に1人は3年以内に辞めてしまう傾向があり、採用や育成に投じたコスト(jinzai1人あたり180万円超とも試算)も無駄になりかねません。
一方で、企業が競争力を維持するには優秀な人材の確保が不可欠です。
ミスマッチを防ぎつつ優秀な人材を採用・定着させるためにはどうすればよいのでしょうか。本記事ではそのポイントをガイドします。
優秀な人材を見極める最も有効な採用手法は構造化面接
採用ミスマッチ防止の結論として、最も効果的な人材の見極め方は「構造化面接」です。
構造化面接とは、事前に決めた質問項目と評価基準に基づいて全候補者に同じ基準で質問・評価を行う面接手法です。
面接官による評価のばらつきを抑え、誰が面接しても公平で一貫した評価ができるため、主観や勘に頼った従来の面接に比べて採用ミスマッチを減らせます。
近年、この手法は世界的にも注目を集めており、候補者の内面的な資質把握にも役立つとされています。
構造化面接のメリット
最大のメリットは客観性と予測精度の高さです。
同じ質問で比較することで評価が客観的になり、候補者の将来的な活躍をより正確に予測できます。
実際、Googleが行った調査でも構造化面接の方が職務で成果を出せる人材を予測しやすいという結果が報告されています。
また、質問と評価基準があらかじめ定まっているため、面接ごとの無駄を省いて効率的に進められます。
さらに、評価結果を数値化・共有しやすく、チームでの合否判断もしやすいでしょう。
加えて、公平な選考プロセスは候補者に安心感を与え、企業イメージ向上にもつながります。
構造化面接の導入方法
効果を最大化するには適切な導入が重要です。
まずは採用基準を明確化し、職種や役割ごとに求めるスキル・コンピテンシー(能力・行動特性)を定義します。
次に、その基準にもとづいて評価項目と評価尺度を設定し、それらを引き出す具体的な質問リストを準備します。
面接ではマニュアルに沿って質問し、候補者の回答を評価シートに記録・採点します。
全候補者の評価が揃ったら基準に従って合否判定を行います。
このように手順化することで、誰が担当してもブレない見極めが可能になります。
構造化面接の実例
グローバル企業の中でも構造化面接を採用するところが増えています。
その代表例がGoogle社です。
Googleでは職務に直結した質の高い質問を用意し、頭の体操のような奇問は避ける、評価フィードバックを文書化して面接官間で共有する、といった独自の構造化面接手法を取り入れています。
その結果、構造化面接は応募者・面接官双方にとってより良い体験をもたらし、公平な手法であると高く評価されています。
このように、世界的企業も注目する手法であり、実施する価値は大いにあるでしょう。
もちろん構造化面接にも留意点があります。
同じ質問ばかりでは候補者が事前に模範回答を準備しやすくなるため、面接官同士でフィードバックし合いながら改善を続けましょう。
また、形式的になりすぎると候補者の新たな一面を引き出しにくかったり、尋問のように感じさせてしまう恐れもあります。
面接官は質問リストに沿いつつも、候補者の個性に配慮した対応を心がけることが大切です。
他の採用手法との比較:構造化面接、リファラル採用、適性検査などのメリット・デメリット
人材を見極める採用手法は構造化面接以外にもさまざまあります。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社に合った組み合わせで活用することが重要です。
代表的な手法について比較してみましょう。
構造化面接
メリット=面接官の主観を排し客観的かつ公平な評価ができるため、採用ミスマッチ防止に有効。
候補者の将来のパフォーマンスも予測しやすい。
デメリット=事前の質問設計や評価基準の策定に手間がかかり、面接官のトレーニングも必要。
形式に慣れないうちは対話が機械的になりがちで、想定外の長所を見落とす可能性もあります。
リファラル採用(社員紹介)
メリット
自社をよく理解した社員からの紹介により、社風に合う人材を獲得しやすくミスマッチが起きにくい。
実際、求人サイト経由の採用者に比べてリファラル入社者の1年以内離職率は約1/3以下(22.1%→6.8%)だったというデータもあります。
信頼できる人脈から優秀な人材(いわゆる「眠れる優秀層」)にアプローチでき、採用コストを抑えられる点も利点です。
デメリット
紹介元となる社員の人脈に候補者が限られるため、大量採用や多様な人材の確保には不向きです。
また社員の主観に依存する部分があり、基準を設けないと偏った採用になるリスクもあります。
適性検査・アセスメントツール
メリット
知能テストや性格検査などにより能力・適性を数値データで評価でき、主観に頼らない選考が可能です。
短時間で多くの応募者を客観基準でスクリーニングできるため、採用初期フェーズの効率化にも有効です。
デメリット
テスト結果はあくまで一側面であり、仕事での活躍度を完全に測ることはできません。
高得点でも社風に合わなかったり、逆に点は低くとも現場で力を発揮する人材もいます。
また、適性検査の内容によっては受検対策が可能なものもあり、公平性を期すには信頼できるツール選定と慎重な運用が求められます。
導入コストや受検者の負担も考慮すべきでしょう。
これら以外にも
- インターンシップや職場体験入社による見極め(実際の業務を通じて適性を見る)
- グループディスカッション(協調性やリーダーシップを見る)
- AI・動画面接(効率化と客観評価)
など手法は多岐にわたります。
それぞれの特性を理解し、構造化面接を軸に必要に応じてこれら他の手法も組み合わせることで、採用の精度を一層高めることができます。
見極めた人材を活躍・定着させるための組織環境の工夫
せっかく見極めて採用した優秀な人材も、受け入れる側の環境が整っていなければ十分に活躍できず、離職してしまう恐れがあります。
採用の成功は採用時点で終わりではなく、その後の定着・活躍まで含めて初めて完結します。
ここでは、採用した人材が力を発揮し長く働けるようにするための組織環境づくりのポイントを紹介します。
公正で透明性の高い評価制度を整える
入社後の評価制度は、人材のモチベーションと定着に直結します。
社員が「成果や貢献が正当に評価されている」と感じられる仕組みを作ることが大切です。
評価基準を明文化し、昇給・昇進や賞与に公平に反映させましょう。
公正かつ透明な人事評価によって高い成果を出す社員に正当な報酬や機会を与えれば、優秀な人材を引き留める効果が期待できます。
実際、公平な評価制度が整っていると優秀な人材を惹きつけやすくなり、定着率の向上にもつながると指摘されています。
逆に評価が不透明だと不満が蓄積し、早期離職の原因にもなりかねません。
納得感のある評価とそれに基づく処遇が、社員のやる気を引き出し離職防止につながります。
継続的な育成とフォローアップ体制の充実
入社後のフォローや継続的な人材育成も、優秀な人材の活躍・定着に欠かせません。
新人や中途入社者の場合、早期に戦力化するには組織ぐるみのサポートが必要です。
具体的には
- メンター制度や定期的な1on1面談を設けて困りごとや不安を早めに解消する
- 入社後一定期間ごとにフォローアップ研修を実施してスキル振り返りとモチベーションアップを図る
などといった取り組みが効果的です。
その結果、新入社員と企業の結びつきが強くなり、早期離職の抑制が期待できます。
また、中途入社者には新卒以上にフォロー体制が手薄になりがちです。
現場担当者任せにせず、人事部門と配属先上司が連携して計画的にオンボーディングを行いましょう。
例えば、入社後3ヶ月間は人事と現場リーダーが協力して定期面談やOJT計画の確認を行うなど、組織的にサポートすることが大切です。
こうした伴走体制により、中途入社者の早期離職を防ぎつつ早期戦力化につなげることができます。
さらに、長期的なキャリアパスや成長機会を提示することも重要です。
優秀な人材ほど成長意欲が高いため、研修制度の充実やジョブローテーション、昇進のチャンスなどを用意し、「この会社で成長し続けられる」と感じてもらうことが定着につながります。
定期的なキャリア面談で将来の目標を擦り合わせ、会社としてサポートする姿勢を示しましょう。
チームの心理的安全性を確保する
組織で心理的安全性が高い状態を作ることも、優秀な人材の力を最大限発揮させ、長く活躍してもらうために欠かせません。
心理的安全性とは、「チームの中で本音を言い合ったり失敗しても報復や恥をかかされる心配がない」と感じられる状態です。
これが確保された職場では、メンバーは萎縮せず能力を伸ばしやすくなり、組織への愛着心やエンゲージメントも高まります。
結果として離職率も低くなり、優秀な人材の流出防止に効果を発揮します。
実際、Googleの大規模調査「プロジェクト・アリストテレス」でも、チームの成功要因として心理的安全性が最重要とされ、心理的安全性の高いチームは離職率が低く生産性・収益性も高いことが確認されています。
意見やアイデアを否定から入らずまず受け止める文化、失敗を個人攻撃ではなく学習機会と捉える姿勢を醸成しましょう。
例えば
- 会議で発言しやすい雰囲気作りを心がける
- 小さなミスでも報告
- 共有しやすいよう称賛と建設的フィードバックをセットにする
などといった工夫が考えられます。
また、日頃から感謝や賞賛を伝え合う風土も信頼関係の構築に役立ちます。
心理的安全性が担保された職場ではメンバーが安心して挑戦でき、結果的に組織全体の活力が増し、優秀な人材も「ここで働き続けたい」と感じるでしょう。
まとめ:採用の成功は戦略と見極めが鍵
採用で優秀な人材を獲得し活躍してもらうためには、戦略的な手法の採用と的確な人材の見極め方が鍵になります。
構造化面接に代表される科学的なアプローチで採用ミスマッチを防止しつつ、リファラル採用や適性検査なども組み合わせて自社に最適な選考プロセスを設計しましょう。
また、採用後も公正な評価・育成体制や心理的安全性の高い職場づくりによって人材の定着を図ることが重要です。
採用手法の工夫と組織環境の整備によって、ミスマッチのない最適な採用を実現し、人材を会社の成長エンジンへと育てていきましょう。
採用の成功を制するものが、これからの人材獲得競争を制するといっても過言ではありません。
ぜひ本記事のガイドを参考に、貴社の採用活動に戦略的な見極めとフォローの仕組みを取り入れてみてください。
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